# 百景

大坂城

山里曲輪

山里曲輪(くるわ)、現在はは山里丸と紹介されています。 山里曲輪自体はもともと秀吉が茶の湯や、会見の場として作ったものとされています。
この地にあった糒櫓で茶々姫と秀頼をはじめ、三十二義士が命を絶ったことは有名です。
それだけではなく北庄が落城した後、茶々姫たち三姉妹の身柄は一時期ここにあったとも言われます。 妹たちが嫁ぐのを見届け、一人になった茶々姫を案じてお寧さんが木々や花を植えさせたという話が残っていることを伺いました。 実際、茶々姫はお寧さんとともに度々この山里曲輪で藤などの花見を楽しんでいます。
一 十三日昼時分より於山里 北政所様・二丸様其外御女房衆悉御花見之由(『駒井日記』文禄三年二月十四日条)
優しい思い出が多いためでしょうか、茶々姫はこの地をとても愛していたそうです。 終焉の地にこの山里曲輪を選んだのも、そのこととは無関係ではないかもしれません。

自刃跡の石碑


自刃跡とされている場所の石碑。△
特にこの地は、茶々姫や秀頼をはじめ大坂の陣で命を落とした方たちを偲ぶ方にお会いする機会が多いです。 姫を偲ぶものも最も多く、右で紹介している石碑は茶々姫や秀頼が自刃した糒櫓跡はお心暖かい方のお陰で花が絶えることがありません。

実は糒櫓跡ではないかと推定されている地点は2箇所あり、その1箇所が石碑がある地点です。 もう1箇所は現在スロープとなっている地点の遥か下方(地中)になっており(左写真)、何の目印もない為にあまり知られていません。 しかしながら現在自刃跡として有力視されているのは実は此方のほうだったりします…
とはいっても、現在天守閣から山里曲輪に下りるにはこの道しかなく、かなり遠回りしなければ避けては通れません。 私はいつも無駄な努力と知りつつ、なるだけ端を通りながらも心が痛みます…(涙)

自刃跡とされているスロープ下の地点。△


自刃跡を哀しげに見つめる観音様 △

かつて祠のあった場所。 △
スロープ下地点に関係する遺構としては、山里曲輪の端にひっそりとある観音様です。 ここには秀頼・茶々姫に殉死した三十二人の義士が祀られています(でも碑文に記されているのは二十四人です…)。三十二義士の検討はまた別項にて。

戦争の空襲で崩壊した石垣の中から出てきた墓石を集めて作られた祠だそうで、学芸員さんによると「勝手に作っちゃったものだから、大阪城の案内でも紹介されないところだよ」とのこと…
現在の祠はその墓石を積み重ねられた当時の祠(下写真)から少し移動しています。

この観音様は他にはあまり見ない様子で、少し俯いているのですが、その視線の先が、ちょうど自刃跡想定地付近であるそうです。

なお、トップページに引用している和歌(「山里の悪夢はさめむ永しえに 弥陀の浄土で一蓮托生」)はこちらに記されています。

こちらの碑文に記された義士
大野治長、大野治徳、速水甲斐守時之、速水出来丸、毛利勝永、毛利長門、高橋半三郎、高橋十三郎、 津川親行、竹田永翁、堀対馬守、武田左吉、森島長意、伊藤武蔵守、土肥勝三郎、真田大助、 萩野道喜入道(氏家行広)、寺尾勝右衛門
和期の局、大蔵卿の局、宮内卿の局、右京大夫局、玉の局、饗庭局


本丸付近


秀頼ら戦死者を祀る祠 △
豊臣期の天守閣は先述のとおり現在の天守閣よりも東方にあったといわれますが、 現在の天守閣の裏手(山里曲輪から見上げたところ)には一つの祠があります。 ここでは、秀頼をはじめ大坂の陣など、これまでこの地で戦死した方々の霊を祀っているそうです。
分かりづらい、奥まったところにある上に、祠にはあまり親切な解説も掲げられていないので、 訪れる方も多くはありません。 しかし、逆に言えばとても静かで、見晴らしがとてもいいところです。



〔ひとりごと〕
山里曲輪は、私にとっても大坂城の中で最も安らぐ場所です。 何度訪れても大坂城は迷ってしまうのですが(…)、ここだけは迷わず来れます。
山里曲輪の真ん中には、大坂の陣の後豊臣の遺構を土の下に追いやった方たちのマーキングが今でも残されています。 それを見るたびにどうしても心が曇るのですが、その方たちだって決して一枚岩ではなく、 仕方なく従事せざるをえない立場の方もいただろうし、全く義理もないからこそすすんで従事した方もいたのでしょう。 けれど、メンバーを見るとどうしてもあえて前者の方にやらせたようにも感じました。

山里曲輪の中でも、特に観音様はとても思い入れが深いです。 いろいろいわくはありますが、少し俯いた観音様を見ていると胸が一杯になります。
こちらの観音様をはじめ、山里曲輪にについては眞田丸の七郎様とそのご友人様にいろいろ教えていただきました。 本当に貴重なお話をうかがうことが出来て、数年前のことですが未だに忘れられない貴重な一日でした。いくら感謝してもしきれません。


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